こんにちは、正木香子です。
このたび「文字の食卓」Webサイトをリニューアルしました。
自分の記憶の中にある書体見本帳をとにかく形にしたくて、誰かと共有したくて、たったひとりでチクチク手作りしたホームページを立ち上げたのは2011年のこと。
おかげさまで、たくさんの方に応援していただいた「文字の食卓」は約2年の連載を経て書籍化され、3冊の本を出すことができました。
書籍化にともない現在は公開を一部終了していますが、「文字を食して言葉をあじわう」というコンセプトはそのままに、フォントの滋味豊かな魅力を伝えるWebメディアとして発展させていきたいと思っています。
私の背中をおしてくださり、Web制作にご協力くださったのは、『本を読む人のための書体入門』(星海社新書)を一緒に作ったフォントディレクターの紺野慎一さんです。
デザインをお願いしたのは、ベストセラー『大家さんと僕』(新潮社)の装丁や、ガンダム40周年プロジェクトのキービジュアル&ロゴのアートディレクションをつとめられた(chichols)の山田知子さん。新書からコミックスまで幅広く、センスのいいブックデザインを手がけられています。
「食卓」らしく文字が映える白をベースに、ページの白さが本によって違うように、微妙な色のニュアンスがほしいとイメージをお伝えして、余白を感じる大人っぽいデザインにしていただきました。
ホームページのタイトルや、ナビゲーションメニューには、写植書体(石井太ゴシック/石井太明朝ニュースタイル)を使用しています。
意外に思われた方がいるかもしれませんが、本文にはあえてWebフォントをつかっていません。
「文字の食卓」は「書体」をモチーフにしたWebサイトなので、本文書体については検索やSNSからサイトを訪れてくださった方がもっとも見慣れているデバイスフォントにしてもらいました。これからもたくさんの書体をお皿の上にのせて、あじわえるといいな。
デバイスによって「版面」が異なることは、Webサイトの宿命でもあります。
山田さんが微調整してくださったデザインを、さらに色々なデバイスで見たときの読みやすさを重視して実装してくださったのは、インタラクションデザイナーの松島智さん(String & Letters)です。
松島さんは電子書籍を誰でもウェブ公開できるフリーの配信システム、EPUBビューワ「BiB/i」の開発者で、電子出版の世界で活躍されています。
こんなにシンプルな構成のWebサイトに、ありえないくらい贅沢なチームで、プロの手をお借りしていいのだろうか……と恐縮する思いもありましたが、「シンプルである」ために必要なディテールを話しあうことは、タイポグラフィの本質である「言葉のデザイン」について考える機会にもなりました。
それぞれお忙しいなか、根気強くつきあってくださったことに感謝します。
同世代があつまった放課後の部活動みたいなものづくりは新鮮で、とても楽しい経験でした。
本当に、ありがとうございました!
皆様。
あらためて、新しい「文字の食卓」をどうぞよろしくお願いします。